脱プラスチックはなぜ必要?課題と実践方法を詳しく紹介
SDGs(持続可能な開発)の重要テーマの一つとして環境への配慮があげられ、中でも「脱プラスチック」は国際的に重大な課題の一つです。
しかし、なぜ脱プラスチックがここまで重視されているのか、「脱プラ」の流れが進む中で日常生活で不便をしいられ疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では脱プラスチックについて徹底解説します。なぜ必要なのか、現在どのような取り組みが行われていて、どのような課題があるのか、個人・企業ですぐに実践できる取り組みについても実例をもとにご紹介します。
脱プラスチックについて知識を深めたい方、ご自身でいますぐできる取り組みを知りたい方はぜひご覧ください。
目次
脱プラスチックとは?
脱プラスチックとは、環境への配慮からプラスチック製品の製造・使用を控える取り組み全般のことです。
安価で軽量で加工しやすいプラスチックは、日常生活の様々なシーンで活用されています。
とりわけ、日本は人口1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量がアメリカに次ぎ、世界2位とプラスチック依存度の高い国です。
しかし、プラスチックは製造から処分の過程で温室効果ガスを放出します。また、不法に投棄されたプラスチックゴミが海洋汚染など自然界に悪影響を与えるのも事実です。
日本ではプラスチックのリサイクル回収率は87%(2021年時点)と高い水準を誇っており、不法投棄などの悪影響は相対的に少ないと言えるでしょう。しかし、リサイクルされたプラスチックの多くが火力発電などに再利用される「熱回収」で利用されています。燃えるゴミとしての単純焼却と合わせておよそ2/3が焼却による処理です。そのため、リサイクル率が高いとは言っても、温室効果ガス排出の観点から環境に十分な対策がされているとは言えません。
現在、世界でのプラスチックの総消費量は年間4.6億トン(2019年時点)ですが、このまま何も対策を行わないとこの数値は2060年には12億トン以上にまで膨れ上がると試算されています。
これだけの量のプラスチックの製造・廃棄および不法投棄は地球環境に多大なる影響を与えかねません。そのため、世界的にプラスチックの製造・使用を控える「脱プラスチック」の取り組みが大々的に実践されています。
脱プラスチックについて以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
◆【脱プラスチック】プラごみ削減のメリット・デメリットは?脱プラの必要性も解説 – SAWANNA by Field Alliance Inc.
プラスチックが引き起こす環境問題
プラスチックは様々な形で環境問題を引き起こすことがわかっており、加えて将来的には人体に直接的な悪影響を及ぼしかねません。
プラスチックが引き起こしている、もしくは今後引き起こしうる問題について解説します。
海洋汚染と生態系への影響
プラスチックは海洋に流出し、海洋汚染や生態系への悪影響を及ぼしています。海洋に流出するプラスチックごみは、毎年約800万トン(ジャンボジェット機にして5万機相当)。漂流し続けるプラスチックごみの誤飲やゴミに引っ掛かっての負傷などは時に生物の命にも影響を及ぼします。このようなプラスチックごみの海洋汚染が大きくなると、元々ちょうど良いバランスで機能していた生態系が破壊され、根本的に崩れかねません。
地球温暖化への影響
プラスチックは様々な形で地球温暖化に悪影響をもたらします。地球温暖化の大きな要因の一つが、二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスの過剰な放出。結果として地球の気温が上昇し、自然災害や生態系の変化などを引き起こします。
石油製品であるプラスチックは製造過程でも処分過程でも温室効果ガスを放出するため、地球温暖化に大きな影響を与えてしまうのです。
健康被害
プラスチックは人間の健康に被害を与える可能性があります。プラスチックは基本的に完全に分解されることはなく、「マイクロプラスチック(5mm以下のプラスチック)」として地球上に残ります。
マイクロプラスチックが空気や水、食事などを通して体内に吸収され蓄積されることで、様々な問題を引き起こしかねません。
脱プラスチックへの障害と課題
脱プラスチックの必要性は広く認識され実際に取り組みも行われていますが、残念ながら現状浸透しているとは言い難いのが実情です。脱プラスチックの障害となっている要因や課題について解説します。
代替製品の不便さ
近年プラスチックの代替製品が多く登場していますが、その一部は使い勝手が悪く受け入れられていないのが実情です。
例えば、プラスチックのストローに代わる紙のストローは「紙の味がして美味しくない」「ふやける」などの声があがっています。また、プラスチックのスプーン・フォークに替わる木製の使い捨てカトラリーも「使い勝手が悪い」と評価されることも。
代替製品の使い勝手がプラスチック製品に追い付かず、中々浸透しない実情もあるのです。
生分解性プラスチックにかかるコスト
使い勝手と環境への配慮を両立させる選択肢として「生分解性プラスチック」が挙げられますが、コスト面などの課題があり、普及が難しいのが実情です。
生分解性プラスチックとは、微生物の作用で分解され、最終的には水と二酸化炭素だけになり、自然に回帰するプラスチックのこと。つまり、従来のプラスチックと同様の使い勝手で、環境に優しい素材と言えるでしょう。
しかし、生分解性プラスチックには技術的な課題もあり、現段階では高価です。そのため、プラスチックの代替品として浸透させるにはコスト面での難しさがあります。
脱プラスチックの課題や「意味ない」と言われる理由について以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
◆【脱プラスチック】脱プラスチックはなぜ「意味ない」と言われるのか? – SAWANNA by Field Alliance Inc.
国内外の脱プラスチック取り組み事例
脱プラスチックは国際的な課題であり、個人、企業だけでなく国が主導となって取り組んでいる事例もあります。国内外で、国家規模で行われている脱プラスチックの取り組み事例について見ていきましょう。
日本における脱プラスチック
日本での注目すべき脱プラスチックの取り組みとして2022年4月「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律/プラスチック資源循環促進法」通称プラスチック新法(プラ新法)が施行されました。
プラ新法では、例えばプラスチックの容器やカトラリーなど(特定プラスチック)を提供する事業者に対し、代替素材への変更やプラスチック製品の有償化といった対応を求めています。指導・命令に従わない場合には罰則規定が設けられており、国主導で強く脱プラスチックを進める意思が見て取れる法律です。
EUにおける脱プラスチック
EUでは2021年に脱プラスチックに関する新規則が設けられました。内容としては、海洋ゴミとして上位を占める使い捨てのカトラリーや皿、ストローなどのプラスチック製品や、漁具の規制を徐々に強化することなどが定められています。
また、ペットボトルなどのプラスチック飲料ボトルの回収率を引き上げる目標設定、ボトルに再生プラスチックを用いる比率の目標設定なども行われています。
アメリカにおける脱プラスチック
アメリカでは2021年11月に「国家リサイクル戦略」が発表されています。2030年までにリサイクル率50%を目指し、リサイクル政策として初めて、廃棄までに生じる温室効果ガス排出削減目標を制定しています。
こういった流れの中、マクドナルドやスターバックスなどの大手企業が全社的に脱プラスチックの活動に取り組み、世界の先進的な事例となっています。
国内外の脱プラスチックの取り組みについて、下記の記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
◆【脱プラスチックの取り組み方】個人・企業別の取り組みと世界各国の事例を紹介 – SAWANNA by Field Alliance Inc.
個人でできる脱プラスチックの取り組み
個人でできる脱プラスチックの取り組みについて解説します。すぐに実践できるものも多く、1人ひとりが小さな取り組みを積み重ねることで大きな効果が期待できます。
また、環境への配慮だけでなく、ご自身も経済的メリットが得られる取り組みもあるため、取り組みやすいものから参考にしてみてください。
方法1.レジ袋の代わりにエコバッグを使う
エコバッグを持ち歩くことは、誰もがすぐに実践できる脱プラスチックの取り組みです。日常の買い物でレジ袋をもらわないだけでも、積み重なると膨大な量のプラスチック削減につながります。
エコバッグは数百円程度から購入できるため、毎回数円のレジ袋を購入するよりも長期的にお得であることもポイントです。
方法2.ペットボトルの代わりにマイボトルを使う
飲み物はマイボトルに入れて持ち歩くことで脱プラスチックが進められます。自動販売機でペットボトルを買うと、持ち歩きやすく飲み終えたら捨てればよいので便利です。しかし、気軽に買って気軽に捨てられるペットボトルも積み重なるととんでもない量の廃棄プラスチックとなってしまいます。加えて、1本数百円する飲み物は1本1本は安くても積み重なると決して安くはありません。
マイボトルを使い、家から飲み物を入れていくようにすれば1本あたり数円程度から飲み物が作れるので脱プラスチックになるだけでなく経済的です。
方法3.マイ箸、マイストローなどを持ち歩く
マイ箸、マイストローを持ち歩くことも、脱プラスチックに繋がります。マイストローがあればプラスチックのストローが不要になり、マイ箸があればプラスチックのカラトリーや、ビニールで包装された割り箸を受け取る必要がありません。
小さな取り組みですが、多くの人が積み重ねることによって着実な脱プラスチックに繋がります。
企業(団体)でできる脱プラスチックの取り組み
企業・団体が実践できる脱プラスチックの取り組みについて解説します。導入にコストや個数がかかるケースもありますが、長期的には企業のブランドイメージを含め、メリットが得られる場合も多いため、できることから実践を検討してみてください。
具体的な取り組み事例としては下記の記事も併せてご参照ください。
◆【脱プラスチック】企業ができる取り組みは?プラごみ削減の方法も解説 – SAWANNA by Field Alliance Inc.
方法1.過剰包装をやめる
サービスの提供にあたって、過剰な包装を減らす代替案を工夫することが脱プラスチックに繋がります。
例えば、多くの飲食店においておしぼりは一つひとつがプラスチックの袋で個包装されているのが一般的です。しかし、清潔なおしぼりを個包装なしで提供できる仕組みを導入すれば、包装のプラスチックを減らせます。
例えば、手をかざすことで自動でおしぼりが出てくるSAWANNAを導入することで、顧客に清潔なおしぼりを提供しながら包装するプラスチックを省くことが可能です。
◆【脱プラスチック】おしぼりの代替品は?ウェットティッシュのゴミを減らす方法も解説 – SAWANNA by Field Alliance Inc.
方法2.製品の提供を最小限に抑える
商品のパッケージや付属品などで用いているプラスチックを最小限に抑えることも脱プラスチックに繋がります。
例えば、生チョコレートが有名な「ロイズ」では環境への取り組みの配慮としてプラスチックのピックスの同梱を廃止しています。
ロイズの取り組みについて、詳細は下記記事をご覧ください。
◆なんで!?ロイズのピックス廃止の理由を考える - チョコレートを愛するサラリーマン
方法3.素材を紙素材や木製素材に代替する
商品の提供になるべく支障が出ない範囲で、現在プラスチックを用いている部分の素材を紙素材・木製素材に代替することも脱プラスチックの取り組みとして有効です。
ただし、紙ストローや木製カトラリーなど、顧客目線で抵抗や不満が出てくるケースがあるため、顧客の理解を得た上で取り組むことが重要です。
方法4.生分解性プラスチック製品を導入する
現在用いている通常のプラスチックを生分解性プラスチックで代替することで、サービスの内容や品質への影響を抑えながら脱プラスチックに取り組むことができます。
生分解性プラスチックは技術面・コスト面での課題が残りますが、話題性のある取り組みでもあるため、注目されやすくなるかもしれません。
具体的な企業・団体の取り組み事例については下記の関連記事もご参照ください。
◆【脱プラスチック】飲食店向けのプラスチック削減策をご紹介!導入事例や取り入れ方は? – SAWANNA by Field Alliance Inc.
◆【脱プラスチック】ホテル向けのプラスチック削減策をご紹介!導入事例や取り入れ方は? – SAWANNA by Field Alliance Inc.
まとめ
脱プラスチックについて実例を交えながら網羅的に解説しました。
プラスチックは様々な形で地球や人体に悪影響を及ぼしかねないため、具体的な取り組み目標を持って使用を減らしていくことは不可欠です。抜本的な代替案や解決策の浸透が難しく、課題を抱えるところではありますが、個々の国家、企業、個人が意思を持ち、少しずつできることからでも着実に取り組むことが大切と言えるでしょう。
本記事を参考に、無理なく実践できる部分から取り組んでみてください。