【脱プラスチックの取り組み方】個人・企業別の取り組みと世界各国の事例を紹介
プラスチックごみが引き起こす環境問題を少しでも防ぐため、国際的に脱プラスチックの取り組みが進められています。企業や自治体はもちろん、個人個人がプラスチックごみ削減に対して協力的に取り組むことが大切です。
この記事では、プラスチックごみがもたらす影響と脱プラの必要性、そして各国による脱プラの取組事例を具体例を取り上げながら解説します。地球規模で持続可能な社会をつくっていくために、ぜひ参考にしてみてください。
脱プラスチックとは?
脱プラスチックとは、プラスチック製品の利用を削減する取り組みのことです。
プラスチックは衛生面や耐久面にも優れており、生活用品から自動車の部品などさまざまな用途で使われています。簡単に加工ができるうえ、安価で大量に生産可能なため、その生産量も右肩上がりでした。
今や我々の生活になくてはならない存在のひとつですが、近年ではプラスチックの製造・廃棄の過程で起こる環境への悪影響が世界的に大きな問題となっています。
プラスチックごみがもたらす影響
とても便利なプラスチックですが、プラスチックごみが環境にもたらす影響は大きく、決して放っておくことができない問題となっています。
プラスチックごみによって引き起こされる問題にはさまざまありますが、ここでは主に影響が大きい「地球温暖化問題」と「海洋プラスチック問題」について解説しましょう。
地球温暖化問題
プラスチックのほとんどは石油で作られ、製造・処分・経年劣化にわたるすべての過程で地球温暖化を促進する温室効果ガスを排出します。
地球温暖化とは、大量の温室効果ガスが大気中に放出されることで地球の気温が上昇し、自然環境のバランスを崩してしまう現象です。
地球温暖化が進行すると、異常気象による災害が増えたり、干ばつによる食糧危機や海面上昇による居住地の減少などが深刻化する恐れがあります。
我々だけでなく、将来世代に向けてより良い未来を残すためには、地球温暖化を促進する原因となるプラスチックをなるべく早く削減しなければなりません。
海洋プラスチック問題
使い捨てにされたプラスチックごみの多くはきちんとした廃棄処理がされず、毎年約800万トン(ジャンボジェット機にして5万機相当)のプラスチックごみが海洋に流出しているといわれています。
また、プラスチックは化学物質を吸着しやすいため、自然に分解されることはほとんどありません。そのためプラスチックごみが海に放流されてしまうと魚や海鳥がプラスチックの破片を誤飲し怪我をしたり死んでしまうこともあります。
アザラシやウミガメなどの大きさの生物でも、捨てられたプラスチックごみに絡まって身動きが取れず、そのまま餓死してしまったという例もあり、問題視されています。
脱プラスチックの取り組みはなぜ必要?
プラ新法の施行に伴い、我々にとっても身近になった脱プラスチック。取り組みが必要な理由はさまざまですが、主に環境問題の改善と健康被害の回避が挙げられます。
環境問題の改善
脱プラスチックの取り組みが必要な理由として最も大きいのは、地球温暖化や海洋プラスチック問題の進行を防ぐためです。
プラスチックは不適切な処理をされることで、地球環境を汚染してしまいます。正しく処理することが重要なポイントになりますが、現実的にすべての人がすべてのプラスチックの捨て方に意識を持つのは限界があるでしょう。
その点、脱プラスチックの取り組みでは、そもそものプラスチック製品を減らすことを目的にしているため、必然的にプラスチックごみを減らすことにも繋がります。
また、製造の過程で発生する温室効果ガスの発生を抑えることもできるため、今よりも環境問題を改善することが可能です。
健康被害の回避
海に放流されたプラスチックは、長く海を漂流することで海水に含まれる汚染物質を吸着しながら少しずつ小さくなり、やがてマイクロプラスチック(5mm以下のプラスチック)となります。
そのマイクロプラスチックを大量に摂取した魚や生物を人間が食べることで、間接的に人間の体内にも取り込まれます。
マイクロプラスチックが人体へもたらす具体的な影響はまだはっきりとは解明されていませんが、実際に血液や便からもマイクロプラスチックが検出されていることから、有害な化学物質が体内に蓄積されて健康被害を引き起こす恐れがあると指摘されています。
そのため、脱プラスチックの取り組みを進めることは、環境問題だけでなく、直接的な健康被害を回避することにもつながるのです。
脱プラスチックの取り組み方法
脱プラスチックの取り組みにはどのような方法があるのでしょうか。個人でできる取り組みと企業でできる取り組みに分けて、それぞれ解説していきます。
個人でできる取り組み
個人でできる脱プラスチックの取り組みをご紹介します。
エコバッグを持ち歩くレジ袋の有料化にともない、意識的にレジ袋の使用を抑えるようになった人も多いでしょう。エコバッグを持ち歩くことで、無駄なレジ袋(プラスチック製品)の使用を抑えることができます。
マイボトルを持ち歩くマイボトルに飲み物を入れて持ち歩くことで、ペットボトル飲料水を購入する頻度を減らすことができ、プラスチックごみの削減につながります。節約にもなるため、この機会にマイボトルの利用を検討してみてはいかがでしょうか。 使い捨てカトラリー類の使用を控える
割り箸やプラスチックスプーンなどの使用を控えるのもよいでしょう。コンビニやスーパーでお弁当を購入する際も、自宅で食べる場合は受け取らないようにするなど、必要のないプラスチック製品の使用を抑えることで、脱プラスチックに貢献できます。
企業ができる取り組み
企業でできる脱プラスチックの取り組みをご紹介します。
プラスチック製品の削減脱プラスチックを進めるうえでまず取り組みたいのは、プラスチック製品の削減です。
特に使い捨てのプラスチック製品は使用を抑えることで脱プラスチックに貢献できます。無駄な包装材などはなるべく削減し、プラスチックごみを減らす必要があるからです。
ただし、プラスチック製品を完全に無くすというのは難しいため、次に紹介するような代替素材への変更や環境に配慮されたプラスチック製品の利用を進めることも大切です。
代替素材への変更プラスチック製品は代替素材へ変更することが可能です。具体的には、プラスチックで製造されている容器やカトラリーなどを、紙素材や木材の製品へと変えることを指します。
代替素材を使用した製品はプラスチックと比べて導入コストがかかりますが、特に紙素材は自然の条件下で分解されるうえリサイクル率も高く、サステナブルに優れた素材といえるでしょう。またこれらの素材を使用した製品例としては、紙袋や紙ストローが挙げられます。
一方で木材は加工がしやすく、デザイン次第でさまざまな製品を作ることができるうえ、木材の種類によってはプラスチック製品と比べて軽い場合もあるため、軽量化を目的として代替することも可能です。木製カトラリーや木製おもちゃなどは、デザイン性が高く取り入れやすいためおすすめです。
環境に配慮されたプラスチック製品の利用代替素材への変更が難しい場合は、環境に配慮されたプラスチック製品を使用するのも良いでしょう。例えばバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックがあります。
どちらも完全に環境に無害であるとはいえませんが、一般的なプラスチックと比較して環境に対する影響が少ない素材で、使い心地を大きく変えることなく活用することができます。
<バイオマスプラスチックについて>
バイオマスプラスチックは植物由来の原料でできています。
自然界では分解されないため、海洋汚染問題の解決に繋がるわけではありませんが、地球上の二酸化炭素を増やさないという面で地球に優しいのが特徴です。身近なところだと、バイオマスプラスチックを使用した食容器包装やレシ袋があります。
<生分解性プラスチックについて>
生分解性プラスチックは自然に分解される性質をもったプラスチックです。
分解される過程で微量な化学物質が放出される可能性があるため完全に無害とまでは言えませんが、一般的なプラスチックと比較して環境に対する影響が少ないのが特徴です。身近なところだと、生分解性プラスチックを使用したペットボトルやシャンプーボトルがあります。
各国の脱プラスチック取り組み事例
各国は脱プラスチックの取り組みをどのように進めているのでしょうか。具体的な事例を挙げながら解説します。
日本の脱プラスチック取り組み事例
日本では、脱プラスチックの取り組みとしてプラスチック新法と呼ばれる「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律/プラスチック資源循環促進法」が2022年4月に施行されました。
この法律により、特定プラスチック使用製品に指定されたプラスチック製品を使用している対象事業者は、スプーンやフォークを有償での提供に変更したり、代替素材に変更するなど、プラスチックごみの排出の抑制に取り組むことが求められるように。
事業者側には新たな負担がかかるものの、仮に国の指導・助言に留まらず命令に違反した場合は、50万円以下の罰金が処せられる可能性もあるため注意が必要です。
このように、プラ新法は日本全体の企業が脱プラスチックを積極的に取り組むきっかけとなっています。
アメリカの脱プラスチック取り組み事例
アメリカでは、脱プラスチックの取り組みとして2021年11月に環境保護庁(EPA)が「国家リサイクル戦略」を発表しました。
この戦略は2030年までにリサイクル率を50%に引き上げるリサイクル目標に沿うもので、都市ごみを対象に、再生製品市場の改善、回収の促進とインフラ整備、再生工程での汚染軽減などを掲げています。国レベルの制度整備を進めるとし、リサイクル政策で初めて、廃棄までの過程で生じる温室効果ガス排出削減目標の策定を約束した発表です。
この発表により、国全体でリサイクルを促進する流れが進み、マクドナルドやスターバックスなどのグローバル企業は、プラスチック問題への取り組みが活発に進められ、世界が脱プラスチックを促進するうえでの指針となっています。
カナダの脱プラスチック取り組み事例
カナダでは、脱プラスチックの取り組みとして2022年6月に「特定使い捨てプラスチック禁止規制案」が発表されました。
これにより、レジ袋やナイフ・フォーク・スプーン類、リサイクル困難な外食の持ち帰り用の容器、缶ボトル携帯用リング、かき混ぜ棒、ストロー(一部例外あり)の使い捨てプラスチックの使用が禁止に。
政府によると、この規制案が施行されると10年間で2.3万トンを超えるプラスチックの環境流出を防ぐことができると推定されており、脱プラスチックの流れを大きく前進させることが期待されています。
イギリスの脱プラスチック取り組み事例
イギリス政府は、2023年10月からプラスチック製の使い捨て容器やフォーク、スプーンなどの使用を禁止し、生物分解性の代替品に切り替えることを義務付けすると発表。
従わない業者や企業は、罰金が科せられ、施行前から残っていた在庫であったとしても、10月以降に供給することは禁止となります。
またこれに合わせて、プラスチック製包装材の生産者と輸入者にプラスチック税が導入されるなど、先駆的な取り組みが多く進められています。
オランダの脱プラスチック取り組み事例
オランダでは脱プラスチックの取り組みとして、プラスチックフリーのスーパーが誕生。オランダの大手小売チェーンEkoplazaとイギリスの環境団体A Plastic Planetの提携により実現しました。プラスチック包装をまったく使わない世界初のスーパーとして注目されています。
なお、店舗内の内装や陳列棚もプラスチックフリーで、もちろん販売されている商品すべてがプラスチック・フリー。
現在の食品小売業界では商品の4割以上にプラスチック包装がされていますが、700種類あまりのさまざまな商品の包装には、ガラス瓶や生分解可能な材料などが使用されているのです。
まとめ
この記事では、脱プラスチックにおける国際社会や政府の取り組み例や、企業が取り入れる際の具体的なプラスチックごみの削減方法について解説しました。
個人での取り組みも大切ですが、国や企業と力を合わせて脱プラスチックを進めることが重要になります。
プラスチック製品の使用を抑えることで不便になる側面もありますが、さまざまな利用シーンなどを想定し、取り組みやすい脱プラスチックの方法を見つけてみてください。