【脱プラスチック】脱プラスチックはなぜ「意味ない」と言われるのか?

プラ新法の施行やレジ袋有料化に伴い、プラスチックごみの排出を抑える取り組みへの関心が高まっています。しかし一方で、脱プラスチックについて「意味がないのではないか」という意見もあり、取り組みの必要性について疑問を感じている方もいるようです。

そこでこの記事では、プラスチックごみがもたらす影響と脱プラスチックが意味ないと言われる理由、そして脱プラスチックの重要性について解説していきます。最後には飲食店・ホテル・各国による脱プラの取組事例を取り上げますので、ぜひご覧ください。

プラスチックごみを削減しないとどうなる?

プラスチックごみの排出が国際的に危険視されている理由は以下の3つが挙げられます。

  • 地球温暖化の進行
  • 海洋プラスチック問題
  • 健康被害の懸念も

それぞれの理由について解説していきます。

地球温暖化の進行

プラスチックごみの排出が問題視される理由のひとつとして挙げられるのが「地球温暖化の進行」です。

地球温暖化は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが大量に大気へ放出されることで、地球の気温が上昇し、あらゆる自然環境のバランスが崩れてしまう現象をいいます。

地球の気温が上昇することで、異常気象による自然災害が増加したり、干ばつによって食糧危機が深刻化する恐れがあるのです。

ほかにも、海の水温が上昇することで熱膨張が起きたり、北極などの氷河が溶け海面が上昇することで居住地が減少していくといった恐れも危惧されています。

プラスチックのほとんどは石油で作られているため、製造・処分・経年劣化にわたるすべての過程で温室効果ガスを排出しています。

少しでも地球温暖化の進行を防ぐため、一刻も早い脱プラスチックへの取り組みが必要だといえるでしょう。

海洋プラスチック問題

地球温暖化のほかに問題視されているのが、「海洋プラスチック問題」。プラスチックごみは、毎年約800万トン(ジャンボジェット機にして5万機相当)におよぶ量が海洋に流出しているといわれています。

使い捨てで海に放流されてしまったプラスチックごみは、分解されることなく漂流し続けるので、破片を魚や海鳥が誤飲してしまったり、触れることで怪我をしてしまうと、最悪の場合死んでしまうこともあるのです。

実際に海に生息しているアザラシやウミガメなどが、捨てられたプラスチックごみに絡まり、そのまま餓死してしまったという例もあります。

海洋プラスチック問題は海に住む生物たちに危険を及ぼしており、生態系のバランスに悪影響が出ることが危惧されています。

健康被害の懸念も

放流されたプラスチックごみの影響は、海に住む生物だけに留まりません。

長く海を漂流したプラスチックは、海水に含まれる汚染物質を吸着しながら少しずつ小さくなり、やがてマイクロプラスチック(5mm以下のプラスチック)となります。

魚はプランクトンなどを食べながら生きているため、マイクロプラスチックを同時に摂取してしまうことも少なくありません。

マイクロプラスチックを摂取した魚や生物を人間が食べることで、間接的に人間の体内にも取り込まれてしまうのです。

マイクロプラスチックが人体へもたらす具体的な影響はまだはっきりとは解明されていませんが、ある研究では実際に血液や便からもマイクロプラスチックが検出されています。

有害な化学物質が体内に蓄積されて健康被害を引き起こす恐れがあると指摘されており、脱プラスチックの取り組みを進めることは、人類の健康被害を回避することにもつながるのです。

脱プラスチックはなぜ意味ないと言われるのか

脱プラスチックはなぜ意味がないと言われるのでしょうか。主に挙げられる理由をご紹介します。

個人の取り組みが評価されにくい

脱プラスチックの取り組みとして日本で大きな関心を集めたのが、レジ袋の有料化です。

その際、国や自治体からお店や個人に向けて不要なレジ袋を削減する声かけがされましたが、個人で数枚のレジ袋を削減したところで意味はあるのかといった疑問の声が多く上がりました。

また、レジ袋をゴミ袋として使用している人もいたため、「レジ袋をごみ袋として使っていたので、結局レジ袋が無ければごみ袋を購入するだけでは?」といった声もありました。

一人ひとりの取り組みは規模も小さく、意味がないと感じてしまうこともあるかもしれません。しかし、環境省の調査によると、レジ袋の流通数は有料化前と比べて約10万トン削減されたと報告されています。

日本経済綜合研究センター『包装資材シェア事典 2021年版』(2022年1月)

確かに脱プラスチックは個人の取り組みが評価されにくいですが、国や企業によってそもそもの生産量を減らしつつ、日々の生活では一人ひとりが意識していくことが重要です。

脱プラスチックのデメリット

脱プラスチックを進める上での大きなデメリットは、コスト面と使用感の変化です。

代替品の多くはプラスチックと比較すると高価で、プラスチックよりも重いため輸送コストもかかります。また製品の入れ替えに伴う手間や、今までの仕入れの流れを変える手間も発生してしまうのです。

使用感の変化という面では、紙ストローへの変更に伴い飲み物が不味くなったと感じる人も多いのではないでしょうか。他にも、紙袋や木製カトラリーへの変更で耐久性が低くなるなど、不便になったと感じる人が少なくありません。

■関連記事: 【脱プラスチック】プラごみ削減のメリット・デメリットは?脱プラの必要性も解説

一方、近年では、このようなデメリットが少ない脱プラ製品の開発も多く進められています。

たとえば自動おしぼり機のSAWANNA(サワンナ)は、プラスチックの個包装を無くすことでプラスチック削減を実現しています。

特に飲食店などでは、卓上準備の手間を省くことができるうえ、プラスチックごみの回収・分別が不要で利用後の清掃の効率化も期待できるため、脱プラスチックだけでなくあらゆる面でメリットが得られるでしょう。

SAWANNA(サワンナ)公式HP

始めやすい脱プラスチックの取り組み紹介

ここでは始めやすい脱プラスチックの取り組みを個人向け・企業向けに分けてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

【個人向け】小さく始める取り組み

個人でできる脱プラスチックの取り組みをご紹介します。

レジ袋の使用を控える

エコバッグを持ち歩くことで、無駄なレジ袋(プラスチック製品)の使用を抑えることができます。

ペットボトル飲料水を買わない

マイボトルに飲み物を入れて持ち歩くことで、ペットボトル飲料水を買う頻度を減らすことができ、プラスチックごみの削減につながります。

使い捨てカトラリー類の使用を控える

自宅でコンビニやスーパーのお弁当を食べる際に、使い捨てカトラリー類を受け取らないようにすることで、脱プラスチックに貢献できます。

【企業向け】素材の代替から始める取り組み

企業が始めやすい脱プラスチックの取り組みとして、素材の代替をご紹介します。

紙袋や紙ストローで使用される紙素材は、自然の条件下で分解されるうえリサイクル率も高く、サステナブルに優れた素材です。

また木材は加工がしやすく、デザイン次第でさまざまな製品を作ることができます。デザイン性も高く消費者からの印象も良いため、企業としては始めやすい取り組みといえるでしょう。

他にも、木材素材を使って開発された脱プラスチック製品も多数ありますので、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

脱プラスチックの取組事例

それでは最後に、実際に企業で取り入れられている、脱プラスチックの取組事例をご紹介します。

飲食店の取組事例

喫茶店チェーンのスターバックスでは、使い捨てプラスチック資材を含めた廃棄物削減に積極的に取り組み、紙製ストロー全店舗導入や繰り返し使うカップ 「リユーザブルカップ」 を全店舗で販売するなどの取り組みを進めています。

また生菓子メーカーのシャトレーゼでは、2030年までにプラスチック製品50%の削減を目標に掲げ、プラスチックスプーンを1本2円に有料化したり、木製スプーンを1本2円に有料化するなどの取り組みが進められています。

なお、飲食店における取組事例については、下記の記事でより詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にご覧ください。

■関連記事: 【脱プラスチック】飲食店向けのプラスチック削減策をご紹介!導入事例や取り入れ方は?

ホテルの取組事例

アパホテルでは、プラスチック製品を使用したアメニティ類をバイオマス等の環境に配慮した素材に順次変更、連泊時に清掃不要を希望した人には充実したアメニティ類を提供するなどの工夫をしています。

一方ワシントンホテルでは、バイオマス素材の歯ブラシおよび紙製・生分解性プラスチック製ストローを導入。他にも客室内に設置してあるアメニティの数を減らしたり、アメニティを希望者のみフロントにて配布するシステムに変更しました。

■関連記事: 【脱プラスチック】ホテル向けのプラスチック削減策をご紹介!導入事例や取り入れ方は?

世界の取組事例

アメリカでは、脱プラスチックの取り組みとして2021年11月に環境保護庁(EPA)が「国家リサイクル戦略」を発表。国全体でリサイクルを促進する流れが進みました。

マクドナルドやスターバックスなどのグローバル企業は、プラスチック問題への取り組みが活発に進められ、世界が脱プラスチックを促進するうえでの指針となっています。

またオランダでは、脱プラスチックの取り組みとしてオランダの大手小売チェーンEkoplazaとイギリスの環境団体A Plastic Planetの提携によりプラスチックフリーのスーパーが誕生。

店舗内の内装や陳列棚もプラスチックフリーで、プラスチック包装をまったく使わない世界初のスーパーとして注目されています。

■関連記事: 【脱プラスチックの取り組み方】個人・企業別の取り組みと世界各国の事例を紹介

まとめ

この記事では、プラスチックごみがもたらす影響と脱プラスチックが意味ないと言われる理由、そして脱プラスチックの重要性について解説しました。

脱プラスチックは個人の取り組みが評価されにくいため、意味がないと感じてしまうこともあるかもしれませんが、国や企業と力を合わせ、地道に進めることが重要になります。

プラスチック製品の使用を抑えるデメリットもありますが、さまざまな利用シーンなどを想定し、まずは始めやすい脱プラスチックの方法を見つけることから始めていきましょう。