脱プラスチックって本当に必要?反対意見や取り組む意義を解説
プラスチックの使用を減らす「脱プラスチック」は国内のみならず世界的な取り組みとして注目されています。
一方で、脱プラスチックに対し、様々な観点から反対意見が挙がっているのも事実です。「不便である」「意味がないのでは?」といった個人単位での疑問に加え、「むしろ環境に悪い」といった専門的な意見もあります。
本記事では脱プラスチックの反対意見について代表的な意見を取り上げ、検証した上で改めて脱プラスチックの意義や、無理なく取り組むための考え方について解説していきます。脱プラスチックの意義について疑問をお持ちの方、どのような反対意見があるのか知りたい方はぜひご覧下さい。
脱プラスチックに対する主な反対意見4つ
脱プラスチックの反対意見には、様々な立場からの目線があります。代表的な反対意見4つについて、どういった目線からの意見であるかも踏まえて見ていきましょう。
反対意見①「不便である」(個人目線)
脱プラスチックのための日常での取り組みが「不便」という声を聞きます。
代表的なのが、エコバッグやマイボトルの持ち歩き。確かにわざわざ自宅から荷物を持っていくよりもなるべく身軽に外出した上で、必要な場でレジ袋やペットボトルを入手したほうが手軽でしょう。
また、飲食店がプラスチックではなく紙のストローで飲み物を提供することで「ふやける」「紙の味がする」などの不満を露わにする声も聞きます。
日常で脱プラスチックの取り組みに関して不便さを多く感じてしまうと「こんな思いをしてまで取り組む必要があるのか」と感じてしまうのも無理はありません。
反対意見②「取り組んでも意味がない」(個人目線)
一人ひとりの脱プラスチックへの取り組みの全体への効果がごく小さいことから「自分が取り組んでも意味がない」という意見もあります。
例えば、買い物にマイバッグを持参することでレジ袋の削減が可能です。しかし、仮に週に2~3回の買い物で1回10g程度のレジ袋の使用を控えたところで、年間のプラスチックゴミ削減効果はせいぜい1~1.5kg程度。年間1億トン弱にもおよぶプラスチックゴミ全体に対する影響としてはごく僅かであることは否めません。
そうなると、不便を強いられるマイナスの方が大きく「自分がやっても意味がない」「自分一人くらいプラスチック削減に取り組まなくても環境への影響はないに等しい」と考えてしまうのも無理はありません。
しかし、一人ひとりの小さな取り組みが積み重なることで、その全体の効果は計り知れないものとなります。例えば、日本には5000万弱の世帯があり、各世帯が年間で1キロのプラスチックの削減に成功した場合、その効果は年間5万トンにもおよびます。
逆に全ての個人や世帯が「自分(たち)くらい取り組まなくても良い」と考えていると、プラスチックの消費量増加は進んでしまいます。
小さな取り組みでも全員で積み重なれば大きな効果を発揮し、逆に一人ひとりが「自分くらい」と取り組みを放棄することは大きなマイナスに繋がりかねないのです。
脱プラスチックが「意味ない」と言われる理由や実際の必要性についてはこちらの記事もご参照ください。
◆【脱プラスチック】脱プラスチックはなぜ「意味ない」と言われるのか?
反対意見③「取り組みのコストが高い」(企業目線)
企業の視点から「取り組みのコストが高すぎる」という声も挙がっています。確かに、初期費用のコストが高すぎたり、代替製品の活用でランニングコストが大幅に上がってしまったりといった事態も想定されます。
企業は株主、顧客、従業員などの為にも利益をあげなければならない存在。そのため、脱プラスチックへの取り組みが企業の利益を大きく削ってしまうことに難色を示すのは無理もないと言えるでしょう。
しかし、企業は利益のみを追及する訳にはいきません。自分本位に目先の利益を最優先する姿勢は顧客離れを起こし、逆に利益を失いかねないのです。
また、短期的な利益追求の姿勢が将来利益を上げるための資源を枯渇させてしまい、長期的な利益の最大化を阻害する可能性もあります。
利益を上げることは大前提ですが、収益性のみを追うのではなく、様々な配慮をすることが重要です。
反対意見④「むしろ環境破壊につながる」(専門家目線)
脱プラスチックは地球環境を保つための取り組みですが、むしろその取り組みが環境破壊を加速している、という専門家目線の意見もあります。
例えば、プラスチックのコップやストローに代替する紙コップや紙ストローはむしろ生産・廃棄の過程でより多くの二酸化炭素を排出すると言われています。また、プラスチックの容器をガラスで代替した場合、重量が大きくなるため輸送による環境負荷が高いとも言われています。
確かに、プラスチックの代替策が全ての面で環境負荷が低いとは言えないかもしれません。しかし、現状のペースでプラスチックの使用を続けた場合に地球環境に及ぼす影響が計り知れないのも事実です。
様々な影響を考慮しながら最善策を模索しなければなりませんが、プラスチックの使用量を減らす視点は常に持ち続ける必要があるでしょう。
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◆脱プラスチックのメリット・デメリットとは?SDGsの取り組みに向けて
脱プラスチックに取り組む意義と必要性
脱プラスチックには様々な視点から反対意見がありますが、実際にプラスチックが環境に及ぼしている影響を考えると、やはり脱プラスチックへの取り組みは欠かせないといえます。改めて、脱プラスチックに取り組む意義と必要性について見ていきましょう。
地球温暖化の抑制
プラスチックは製造、処分どちらの過程でも地球温暖化を進行させます。石油から作られるプラスチックは、製造過程で二酸化炭素やメタンからの温室効果ガスが発生。さらに、処分する際にもリサイクルを含めて多くが熱処理されるため温暖化の一因となってしまうのです。
温暖化は自然災害や生態系の変化などを引き起こしてしまい、長期的に地球規模で環境に悪影響を与えかねません。
海洋環境の保護
プラスチックは処分の過程でも環境に影響を与えますが、処分されずに投棄された場合はさらに悪影響を及ぼします。
海洋に流出したプラスチックは溶けることなく流れ続け、誤飲や負傷による生物の死傷をもたらしかねないのです。プラスチックゴミによる海洋汚染は生態系の破壊に繋がり、これまで保たれていたバランスの崩壊ももたらしかねません。
脱プラスチックに取り組むメリット
脱プラスチックは中長期的な地球環境の維持に欠かせない視点ですが、取り組むことによって個人、もしくは企業自体も恩恵を受けられます。脱プラスチックに取り組むメリットについて、個人、企業それぞれ見ていきましょう。
個人が取り組むメリット
個人が脱プラスチックの取り組みを行うことは、地球環境への配慮のみならず、自身の経済的なメリットにも繋がります。
例えば、マイバッグの購入に1,000円程度かかったとしても、1枚5円のレジ袋の購入が抑えられるとなると200回の買い物で元が取れることになります。コンビニなどでの小さな買い物も含めると、1年で200回以上買い物をすることも珍しくはないでしょう。バッグを数年間使うとして、買い換えるまで年間で1,000円のコストメリットがあります。
マイボトルの持ち歩きはさらに大きな節約効果を生みます。自動販売機で缶やペットボトルの飲み物を購入すると1回100円〜200円程度の費用がかかりますが、自宅でパックのお茶を作れば、ボトル1杯の飲み物のコストはせいぜい数十円程度。マイボトルの購入に2,000~3,000円程度かかるとしても毎日の積み重ねとなると年間で数万円単位のコストメリットが出ます。
企業が取り組むメリット
企業が脱プラスチックに取り組む効果としては、短期的には企業イメージの向上、長期的には持続可能な経済活動に取り組めることが挙げられます。
脱プラスチックへの各企業の取り組みが期待されつつある中で、注目を浴びるような取り組みを実施することは企業イメージの向上に直結するのです。場合によってはニュースバリューを獲得し、知名度が向上することで利益に直結することもあるでしょう。
また、短期的に利益を上げることよりも、環境への配慮を行い持続可能な形で経済活動を行う方が、長期に渡ってトータルで利益を上げ続けられる可能性は高まります。
短期的な目線で自社の目先の利益だけを追及するよりも、長期的な目線で地球全体のことを考えて動く方が、かえって利益をあげられる可能性も十分に考えられます。
無理なく脱プラスチックに取り組むために
脱プラスチックには一時的にではなく、長期的に取り組む必要があります。そのため、無理のない範囲で継続する姿勢が重要なのです。
脱プラスチックに無理のない範囲で取り組み続けるためのポイントについて解説します。
できることから少しずつ取り組む
無理のない範囲で、できることから少しずつ取り組むことが重要です。
例えば個人の場合、脱プラスチックの取り組みのためにすぐにあらゆる生活様式を一変させるのは大きなストレスを伴います。自分の我慢や努力が無意味に感じると、元に戻してその後の取り組みにも消極的になってしまうかもしれません。
そこで、まずは他のことは意識せず「買い物時のマイバッグ持参」だけを徹底する。それが当たり前になってきたら「マイボトルの持ち歩き」も取り入れ始める。といった形で少しずつ取り組みを増やしていくことで無理なく取り組みの範囲を広げられます。
企業にしても、脱プラスチックに取り組んだ結果、全く利益を上げられなくなってしまうと本末転倒です。初期投資や増加するランニングコストを無理のない範囲に抑えた上で、将来の経済活動にも備えられる範囲で取り組む姿勢が重要といえます。
常に頭の片隅に意識する
脱プラスチックについて、常に頭の「片隅」程度に意識をおいた上で、できる限りプラスチックゴミを出さない選択をすることが重要です。
あまりに強く脱プラスチックのことを意識しながら活動すると、大きなストレスを感じてしまいます。何らかの意思決定をする際にも、脱プラスチックを最優先で考えると後から後悔するケースが出てくるかもしれません。
強く意識する、最優先で考えるのではなく、常に頭の片隅程度に意識しておき「迷ったら脱プラスチックにつながる選択肢を選ぶ」くらいの基準で考えることで、自然に脱プラスチックへの取り組みが進められます。
補助金を活用する
企業が事業の中で脱プラスチックに取り組むにあたっては、補助金を活用することが考えられます。補助金の活用により、取り組みのための初期費用の負担を軽減することが可能です。
地球規模の課題である脱プラスチックについては、活用できる補助金の種類も豊富です。また、脱プラスチックがメインの目的ではなく副次的効果であったとしても、計画書の中に盛り込むことで採択率を上げられる場合もあるでしょう。
- 脱プラスチックの取り組みを進めるにあたって活用できる補助金はないか
- 何らかの補助金を申請する際、脱プラスチックの視点を絡められないか
双方の視点を意識しておくことが重要です。
脱プラスチックの補助金活用については下記の記事もご参照ください。
◆飲食店での脱プラに活用できる補助金は?採択率を高めるコツも解説
まとめ
脱プラスチックの反対意見について取り上げ、解説しました。これまで当然のように慣れ親しんでいたプラスチックを用いた様式を変えるのには個人には不便さが伴い、企業には構造転換にコストを要します。加えて、現状の代替案が全ての面で環境負荷がプラスチックより低いわけではないのも事実です。
一方で、地球環境への長期的な影響を考慮するとプラスチックの製造・使用を減らしていかなければならないのは明白と言えるでしょう。様々な影響に配慮しながら、無理なく取り組みを進めていくことが重要なのです。
今回解説した内容も参考に、できることから無理のない範囲で脱プラスチックの取り組みを実践してみてください。